国立能楽堂
「山姥」 観世流
前シテ 女 野村四郎 能面:老女
後シテ 山姥 野村四郎 能面:山姥
ツレ 百万山姥 野村昌司 能面:小面
アイ 里人 山本東次郎
都の百万山姥一行が善光寺にお参りにいく途中上路山のなかでのこと、日も暮れてきたころ女が 登場し宿を提供するかわりに夜に山姥の曲舞を頼みます。
里人が山姥のいわれをかたり終わると 後シテが登場し「山姥」を舞います。
いつも思うのですが大きくはない能舞台で 深山幽谷月のあかりのなかで語られる物語がすばらしい。山姥が 実在する鬼女でなく 人をかたどった幽霊でもなく 私には 宮崎駿監督のアニメ「もののけ姫」に登場する「だいだらぼっち」「シシ神様」のようなとてつもなく大きなものに思えました。
里人で登場した山本東次郎さんが 山姥のいわれを語るところがとても面白いのです、東次郎さんの技でしょうか、少しの山崩れからはじまり 落ち葉やどんぐり 山芋を巻き込みどんどん形になったものだと説明します。
後シテの山姥は圧巻です、造形は
髪にはおどろの雪を戴きザンバラな長い白髪ですが 耳の前で細いお下げを二本結んでいます、山姥の面に開いた二つの穴にはほんとうに眼光が見えるようです、蔦のからんだしっかりした枝の杖を持ち舞います。
眼の光は星の如し
さて面の色は
さ丹塗りの・・
終わりには山姥が山廻りして遠ざかりますが 詞章がすばらしいです。
暇申して、帰る山の「輪廻を離れぬ」 というところが気になるなぁ
春は梢に咲くかと待ちし
花を尋ねて、山廻り
秋はさやけき影を尋ねて
月見る方にと山廻り
冬は冴え行く時雨の雲の
雪を誘いて、山廻り
廻り廻りて、輪廻を離れぬ、妄執の雲の、塵つもって、山姥となれる、鬼女が有様、見るや見るやと、峯に翔けり、谷に響きて今までここに、あるよと見えしが山また山に、山廻り、山また山に、山廻りして、行方も知らず、なりにけり (プログラム第407号より)
とても面白かったわ。