2015年10月3日土曜日

坂東玉三郎さんの口跡@阿古屋

初日観劇して坂東玉三郎さんのすばらしい口跡を聞くことができて幸せでした、発声のはじめから聴き惚れました。

秩父庄司重忠に景清の行方を問はれて答える阿古屋
殿様。
四相をさとる御方とは 常常噂に聞いたれど、なんの仔細らしい 四相の五相の、
小袖に留める伽羅ぢやまでと 仇口に言ひ流せし が、今日の仰せに 我が折れた。
勤めの身の心を汲んで 忝い仰つしやりやう、
なんなん誓文で景清殿の行方、知つてさへゐるならば、
お心にほだされ ツイぽんと言ふてのけう が、
なにを言ふても知らぬが真実。それとても疑ひ 晴れずば ハテ いつまでも
岩永左衛門に脅されて答える阿古屋
オホホホホホ、
そんなこと怖がつて、苦界が片時 なろうかいな。
同じやうに座に並んで、殿様顔してござれども、いきかたは 雪と 墨。
重忠様の計ひとて 榛沢様の今日の詮議、
縄もかけず 責めもなく 六波羅の松蔭にて、ものひそやかに義理づくめ、さまざまと労はりて、サア 景清が行方は と問はれし時の その 苦し さ
秩父庄司重忠を演じる尾上菊之助さんの口跡もすばらしかったです。
オオその仔細 いふて聞かさん
曲り偽る心をもつて この曲をなせる時は、その音色 乱れ狂ふ
琴の形を堅に見れば、漲りおつる滝の水。
その水をくれる心の水責め、三絃の二上りに 気を釣り上る天秤責め、胡弓の弓のやがら責めと 品をかへ責むれども、
いつ かな乱るる音締めもなく、調子も 時の合の手の、
秘曲をつくす一節に彼れが誠はあらはれて、
知らぬ 事は知らぬに立つ。
調べを正して聞き取つたる詮議の落着。
この上にも不審あるや。
 (「ようこそ文楽へ」の床本集 壇浦兜軍記阿古屋琴責めの段より引用しました、歌舞伎のそれとは異なっていると思います)
 今月も何度も通いたい歌舞伎座です。

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