2018年5月31日木曜日

新垣悟さんのコマツ@組踊「真珠道」

2018年4月国立劇場おきなわで組踊「真珠道」の公演がありました、残念ながら見にいけなかったので 2009年1月東京国立劇場小劇場で行われた「真珠道」の公演記録(VTR)を視聴室で見ました。

組踊といえば沖縄の美しい色彩の衣装に独特の唱えと歌三線琴太鼓の音曲に極度に様式化された舞踊が魅力的な舞台なのですがこの新作では華やかな色彩はなく全体に簡素で地味な演出です、犠牲となるコマツはモノトーンの衣装でその悲劇的な愛の捧げ方がより強調されていました。

首里城に続く真珠道には那覇港に注ぐ国場川の難所があってどうしても橋を架けたいというのが村人の願いでした。
身分の差から結婚を諦めて尼(ユタ)になったコマツ(新垣悟さん)は普請奉行となったかつての恋人のため 村人のために自ら進んで「人柱」になるのでした。

どの舞台でも新垣悟さんは能面のように微かな微笑みを浮かべているように思えます、執心鐘入で宿の女に怯える美少年でさえ柔らかさがあります。彼のわずかに下方を向いた遠い視線がすばらしい。

真珠道の最後 コマツが人柱になる前に切々と訴えます「今日の私の涙を語ってください」と。この場面いつも静かな新垣さんの感情が一瞬にして表出したように思えました、すごい表現力でした、静かに泣きじゃくっているように見えてびっくりしました。この唱え?ツラネ?は凄かったです、さすが役者さんです。
新垣悟さんが居てこその「真珠道」と思いました。
里がためと思ば 極楽どやゆる 村のためと思ば 花の台(うてな)(あなたのためだと思えば極楽です 村のためと思えば花の台です)
里がためと思て 我が身思みすてて 神のみ言葉よ 拝まてやり(あなたのためにわが身を捨てて神のみ言葉をいただこう)
里が肝願いや 村のためと思て 我身や振り捨てて 行かなしゅもの(あのお方のお心は村への思いです 私はこの身を捨てて参ります)
真珠橋下に 神まささあとて 今日のわが涙 語て賜れ(真珠橋の下に神様の霊験があらたかなら 今日の私の涙を語ってください)華風2018.4より
ビデオテープを巻き戻して最後の場面を何度も見ました、機会があればぜひ舞台を生で見たいと思いました。

2018年5月29日火曜日

小梅の収穫2018

一晩で落ちた実を朝あつめる
今年は豊作です。
今年は収穫のやりかたをかえました、例年は人手の多いときに枝をゆすって実を落として集めましたが、完璧に実ったものは下に落とすと衝撃で割れてしまうし熟していないものまで落ちてしまうので 今年は木の下にシートを敷いて毎朝毎夕芝生とシートに自然に落ちた実を拾い集めることにしました。
拾い集める最中にもポトッポトッと落ちてきます、透けるような青に黄色味がさしてきれいです、それらをまた選別します、完璧で傷のないものは梅干しに、少ーしの傷でもジャムソースにまわされます(美味しく煮てあげるからね)すごく厳しい、「玉」のような小梅が梅干しに漬けられます。
もっときれいな色なんだけどなぁ
 

五月の庭 


カルミアの花
Hope & Dream(バラ)
ピンクのラン?名前をしらない

2018年5月24日木曜日

能 杜若 金春流

2018.5.18
国立能楽堂
杜若(かきつばた)金春流
シテ 杜若の精 櫻間金記 面:節木増
ワキ 旅僧 野口能弘

三河の国八橋(やつはし)では杜若の花が咲き誇っています、むかし在原業平が「かきつばた」の五文字を入れた句「唐衣着つつなれにし妻しあればはるばる来ぬる旅をしぞ思ふ」を詠んだところです。
旅の僧は出会った女の庵に泊まります、その夜 二条后藤原高子の衣をまとい業平の冠をつけた杜若(かきつばた)の精が現れて舞います。

能舞台上で業平の冠をつけ 高子の長絹をまとった杜若の精は もとの女でもなく高子でもなく眉根をよせた中将の面をつけた業平でもなく ふわっとした節木増の面はたしかに女の面なのですが 業平の冠のせいで 女とは見えず「ふわっと軽く美しいなにか」で、とても若い業平?はこうであったのかも?と思いました。

しばらく舞をみせてくれ素晴らしいときを過ごしました。
光普き月やあらぬ、春や昔の春ならぬ我が身ひとつは、元の身にして、本覚真如の身を分け、陰陽の神と言はれしも、ただ業平の事ぞかし、かように申す物語疑はせ給ふな旅人遥々来ぬる唐衣、着つつや舞を奏づらん(地謡 プログラムより)

本朝廿四孝@文楽

2018.5.12
国立劇場小劇場
本朝廿四孝
 桔梗原の段
 吉田幸助改め五代目吉田玉助襲名披露口上
 景勝下駄の段
 勘助住家の段
  横蔵 後に山本勘助 吉田玉助
義経千本桜
 静御前 豊松清十郎
 狐忠信 桐竹勘十郎

歌舞伎の本朝廿四孝と義経千本桜を見たくてチケットを取りました。しかし山本勘助にまつわる孝行のお話しは十種香・奥庭狐火を期待していた私には入り組んで実の身の上は〇〇という話の筋を追うことに精一杯でした。
横蔵 後に山本勘助の勇猛?な姿は印象的です、しかし孝行の話がどうも・・お種と慈悲蔵(後の直江山城之介)の子は「甲州の住人山本勘助」と下げ札をつけ雪のなか捨てられ 乳ももらえず最後は飛んできた小柄で死んでしまうという・・軍師の孝行の話?はどこかずれて感じられました。まぁ勉強不足なのですが。

静御前と狐忠信の道行の義経千本桜は楽しくみることができました。
静御前はおっとりと美しく 狐忠信は時に狐の所作がでて 桐竹勘十郎さんは生き生きと操っていました、歌舞伎では忠信が狐の衣装を着て宙を飛んだり面白いのですが白いフサフサとした衣装での狐の立ち廻りはありませんでした。

2018年5月11日金曜日

小唄 滝の白糸から「楽屋をぬけて‥」

三味線と小唄のお師匠さんから友がお稽古の新曲をいただいてきました。
それは「楽屋をぬけて」という曲で「滝の白糸」の一場面を唄うものだそうです。
たしかに水芸を思わせる旋律もあって ついこの間歌舞伎座で観劇した滝の白糸の??とびっくりしました。
ちょっと難しそうです、早く聴きたいです。
楽屋を抜けて橋の上
肌に冷つく縮緬浴衣
扇使いも水芸の お目通り
笑顔で隠す今宵の別れ
浮世の瀬々と鳴きわたる
あの世がらすも旅の空
月に更け行く遠あかり

ゲスト林英哲@きたやまおさむレクチャー

2018.5.6
原宿クエストホール
きたやまおさむ
レクチャー&ミュージック「日本のリズム」
ゲスト 林英哲 英哲風雲の会 田代誠・辻祐
一番太鼓・?囃子・三つ舞・田楽?・アンコール太鼓打つ子らよ

英哲さんの太鼓を聴きたくてでかけました、しかし演奏が始まるまで30分レクチャーを聞かなくてはなりませんでした、日本のリズムというお題でしたが西洋のリズムはアップビート(裏)日本のリズムはダウンビート(表)だそうです、英哲さんの太鼓のリズムを精神科医きたやまおさむさんが解き明かしてお話ししてくださると思いましたがそうではなかったですね。

英哲さんは日本のリズムをほんとうに5分でわかりやすく説明してくださいました。
「英哲さんのリズム」は生で聴いて感じるほかありません、その素晴らしさを言葉にできたらなぁ。

演奏は相変わらず力強く声明のように声を出して打つところもありました、声も良くでていました、体調管理もバッチリされているのね。
久しぶりに和太鼓の振動震動に包まれました。「癒し」でした。

初夏の庭2018

 
 
何日も何日も草を引いています
草を引いたとたん根と一緒に立派なミミズが飛び出します

2018年5月9日水曜日

能 江口 金剛流

2018.4.29
国立能楽堂
江口 金剛流
 前シテ 女 金剛永謹
 後シテ 江口の君 金剛永謹
 ツレ 遊女二名
 ワキ 旅僧 福王茂十郎

遊女の江口の君が普賢菩薩になって象に乗って西方浄土へゆく終わりがどんなふうなのかみたかったのですが地謡が様子を謡うだけでした。
地謡
思へば仮の宿に、心留むなと人をだに、諫めし我なり、これまでなりや帰るとて、即ち普賢菩薩と現れ、舟は白象となりつつ、光と共に白妙の白雲に打ち乗りて西の空に行き給ふ、有難くぞ覚えたる、有難くこそ覚ゆれ (プログラムより抜粋)
一夜の宿を江口の君に断わられて西行法師は
世の中を厭ふまでこそかたからめ仮の宿りを惜しむ君かな
 江口の君は答えます
世を厭ふ人とし聞けば仮の宿に、心留むなと思ふばかりぞ
悟りに通じる仏教の世界を感じきれなかったです、機会があればもういちど観劇に挑戦します。

今年2018の牡丹

 島大臣 
聖代の大きなつぼみ

能 西行桜 観世流

2018.4.26
国立能楽堂
西行桜 観世流
 シテ 老桜の精 梅若万三郎 面:皺尉
 ワキ 西行 宝生欣哉
 ワキツレ 花見人 殿田謙吉 他三名

深い緑の絹で覆われ枝垂れ桜の花が咲く作り物が静々と登場します。

西行庵では桜の老木が見事な花を咲かせています、その美しさを独占するため西行は花見禁制にしますが花見の人が桜を求めて押しかけます。 これは桜の咎(とが)ではないかと西行が歌を詠むと夜になって老桜の精が現れ 桜の咎 について問答し舞います。

すばらしかったです!こういうお話は大好きです、輝く白髪 品のある微笑んでいるような皺尉の面、決して派手ではない衣装なのに印象的な姿で魅せます。
さて桜の咎は何やらん
浮世と見るも山と見るも、ただその人の心にあり、非情無心の草木の、花に浮世の咎はあらじ(老桜の精 プログラムより引用)
 作り物のなかでジッと座る老桜の精ですが西行へ顔をむけるときに機械仕掛けの人形のようにすこしずつゆっくり首が動きいつの間にかこちらを向いているのです、正面右手奥の端の私と目が合ったように思えました、それからいつ動くのか目が離せなくなりました、とても面白かったです、最後までとても楽しみました。
皺がこんなにすばらしいものとは!

2018年5月8日火曜日

能 観世流 小塩

2018.4.14
国立能楽堂
小塩 観世流
 前シテ 老人 浅井文義 面:笑尉
 後シテ 在原業平 浅井文義 面:中将 

大原野の桜の季節 在原業平の霊が現れて往時を懐かしみ桜のもと舞を舞うお話です。
結果的に連日の観劇になってしまい じっくり鑑賞する体調を整えられずにとてももったいないことをしました。
在原業平が花見車で登場するところを見損なったのが痛かったかな、中将の面の業平に以前魅せられてしまったので 今回も中将の面に会えてよかったです、ほんとうにどうして眉根を寄せているのかしら 儚さをかんじるとあぁなるのかな。
緑と明るい薄い白にちかい衣装の在原業平さん よかったです、そこだけはみました。

大輪の花々@越路吹雪を歌う「愛の讃歌」

2018.4.12
NHKホール
坂東玉三郎 越路吹雪を歌う「愛の讃歌」
 坂東玉三郎
 姿月あさと
 真琴つばさ
 凰稀かなめ
 水夏希
 大空ゆうひ
 霧矢大夢
 海宝直人

歌舞伎で坂東玉三郎さんは「大輪の花」と評されることが多いのですが 「愛の讃歌」コンサートは「大輪の花々」が咲き乱れるようでした、元宝塚男役トップスターの方々はみなさんとても背が高く存在感が大きくて 表現される歌の世界もすばらしいのです、まさに大輪の花々の競演といったところです。

ドレスは 玉三郎さんがイタリアで選ばれたお揃いのテキスタイルで個性に合わせて仕立てられ また ブルガリの宝石が輝いて それはそれは豪華な衣装でした、もちろん玉三郎さんのスーツも同じ生地で仕立てられていました。
ときどきドレスの裾から顔を出す靴が 高ーいピンヒールのすっごく素敵な靴々でした、すばらしいなぁと思いました。

生で歌を聴けてほんとうに良かったです、楽しみました。

絵本合法衢えほんがっぽうがつじ@鶴屋南北

2018.4.2
2018.4.13
三月大歌舞伎「於染久松色読販」鬼門の喜兵衛の仁左衛門さんの悪っぷりがとてもかっこよかったので四月大歌舞伎の「絵本合法衢」をみに来ました。
仁左衛門さんが一世一代 で「悪」の二役 左枝大学之助と立場の太平次 を演じます、出演者のほとんどが仁左衛門さん演じる悪人に殺されてしまうのです いったい何人殺されてしまったかしら 様式美にあふれる凄惨な場面の連続でした。

「於染久松色読販」鬼門の喜兵衛はまだコミカルな感じだったのですが「絵本合法衢」の世界は・・鶴屋南北は何をいいたかったのか 観客は怖いものみたさで興奮したのね。

舞台の薄暗い 暗~い空間が客席にじわじわと迫るようにおもえるところがすごいかしら、仁左衛門さんの一世一代を堪能しました。面白かったです。