2012年9月10日月曜日

音の不思議

林英哲さんをはじめて見たのは 2011年3月31日 東京国際フォーラムで行われた花柳壽輔さんの傘寿の会でした、演目は「耳なし芳一」で 坂東玉三郎さんの平家の女官の亡霊を見にでかけたときです。

舞台には大太鼓が置かれて 林英哲さんが打ち鳴らして舞踊がはじまるのです、とても印象的な舞台で そのとき太鼓奏者としてお名前を知ったのでした。

一度演奏を聴いてみたかったので 翌年2月「五輪具」を見に行きました、そのとき音の集中砲火を浴びて心底びっくりしたのでした。

劇場(世田谷パブリックシアター)のせいか 座った席がちょうど音が集まるところだったのか たしか 「天真北斗」だったとおもうのですが 横一列に並んだ締め太鼓が打ち鳴らされて 音の塊りが私に襲い掛かりました。

それはまるで大勢の地獄の「阿鼻叫喚」の叫びに聞こえ ぞっとして鳥肌が立ちました、音がひき始めると音たちは徐々に浄化されていき 天のように清らかな音に変わってゆくのです。そんな経験は初めてで、その後 演奏会はいかなくてはと思いました。

ほんの数分のことでしたが地獄から天界までの昇華を表現していました、「光の門」でもダンテの神曲から 同じテーマを表現されていました、太鼓の音はシンプルながら表現の幅が広く またこちら側の受け取る幅もとても広くしてくれています。
林英哲さんが演奏で引用していたテネシー・ウィリアムズの言葉、人生のどの選択肢はどれも正しい、を 演奏をどのように感じてもどれも正しい と勝手に解釈しよう。

不思議な経験ができる生のパフォーマンスとはこういうものなのねと納得したのでした。

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