2014年3月28日金曜日

日本振袖始@鳳凰祭三月大歌舞伎千穐楽

2014.3.26
鳳凰祭三月大歌舞伎千穐楽おめでとうございます

最近千穐楽に行くようになりました、これで終いと思うと時間がゆっくり流れるように思います、期待を裏切らないところが俳優のみなさまのすごいところと感心します。

日本振袖始をじっくり鑑賞、玉三郎さんの千変万化の表情と踊りを楽しみました。帰ってから近松門左衛門の文を読みなるほどなるほどと踊りを思い返します。

傑作近松時代浄瑠璃集成 日本振袖始 第五 (国立国会図書館デジタルコレクション)より抜粋して引用します、

時に出鳴り震動し、谷の水音漣立ち、あれあれ遠に雲起り、俄に降来る雨の脚、鳴神は稲妻天地を返し、大蛇が姿現れたり。
(ときにやまなりしんどうし、たにのみづおとさざなみたち、あれあれをちにくもおこり、にはかにふりくるあめのあし、なるかみはいなづまてんちをかへし、をろちがすがたあらはれたり。)

消るとすれば吹上て、又山風が焚く篝、簸川上に年を経て、棲ど濁るは濃き薄き、酒に揉る九十九髪、乱心は何故ぞ、我寶剣に心を懸け、岩長姫とは生れしが、蛇道の縁は切れやらず、悪女と生れ人に笑れ憎れし。
(きゆるとすればふきあげて、またやまかぜがたくかがり、ひのかはかみにとしをへて、すめどにごるはこきうすき、さけにもまるるつくもがみ、みだれごころはなにゆえぞ、われほうけんにこころをかけ、いはながひめとはうまれしが、じゃどうのえんはきれやらず、あくじょとうまれひとにわらはれにくまれし。)

美女は悪女の焔の種、よしとは言じ葦原や、八島の浦の外までも、眉目美き女を取盡さんと、簸川上に隠棲み、八岐の大蛇となりて、人を取る事多年なり。
(びじょはあくじょのほむらのたね、よしとはいはじあしはらや、やしまのうらのほかまでも、みめよきおんなをとりつくさんと、ひのかわかみにかくれすみ、やつまたのおろちとなりて、ひとをとることたねんなり。)

嬉や、今宵ぞ廻りくる廻りくる姿は女、心は甚麼、鬼とも蛇とも見分ず、見る目も暗き心の闇、消るは露より心の玉、輝く大蛇が眼の光、彼こそ今宵の我贄ぞと、肢元を振上げ、紅花の舌を振立々々、歩むとすれども毒酒の香に引留られ、立寄る一箇の甕の影、此處に女はありありありあり有明の、月夜にあらね桂女の、姿は一つ影は二つ、三四五七八岐の大蛇が魂、八の甕に八の形、いで飲干て底なる女を贄に取んと飲でも亂る酒の漣、寄来る寄来る寄来る面、表を浸し頭を下げ、飲ども飲ども盡せぬ泉、次第に傾く大蛇の影、面色変じて茜差す、つのは珊瑚の枝を振立て、憤怒の酔に足引の、山もくるくる野もくるくる、踏留れば踉々々。立上れば逡々々。
(うれしや、こよいぞめぐりくるめぐりくるすがたはおんな、こころはいかに、おにともじゃともみ○わかず、みるめもくらきこころのやみ、きゆるはつゆよりこころのたま、かがやくおろちがめのひかり、あれこそこよいのわがにえぞと、しもとをふりあげ、こうかのしたをふりたてふりたてあゆむとすれどもどくしゅのかおりにひきとめられ、たちよるひとつのもたいのかげ、ここにおんなはありありありありありあけの、つくよにあらねかつらめの、すがたはひとつかげはふたつ、みつよついつつななやまたのおろちがたましい、やつのもたいにやつのかたち、いでのみほしてそおこなるおんなをにえにとらんとのんでもみだるるさけのさざなみ、よりくるよりくるよせくるおもて、おもてをひたしかしらをさげ、のめどものめどもつきせぬいづみ、しだいにかたむくおろちのかげ、めんしょくへんじてあかねさす、つのはさんごのえだをふりたて、ふんぬのよいにあしびきの、やまもくるくるのもくるくる、ふみとまればよろよろよろ。たちあがればたじたじたじ。)

岸破と伏ば亂心は只一身、返すがえすも恐や。
(かつぱとふせばみだれごころはただいっしん、かえすがえすもおそろしや)
瀧の響は皷松風笛の音、雫と積て菊水消え流れ、竹の露の甘露、月は影有明、朝霧夕霧、添て汲は玉水、面白の夜遊や、・・
(たきのひびきはつづみまつかぜふえのね、しづくとつもりてきくすいきえながれ、たけのつゆのかんろ、つきはかげありあけ、あさぎりゆうぎり、そえてくむはたまみず、おもしろのやゆうや、・・)
中略

あら腹立や腹立ちや、偽る人の心の酒、盛て悔ると効あるまじ、思知せん、思知れと八の姿は附纏て、くるくるくる、手繰ば千尋の大蛇が形、眼は火輪火炎の背、鱗を鳴し角を振立て、雲を巻上げ巻き下し、高棚目懸蒐りしは悽愴かりける
(あらはらだちやはらだちや、いつわるひとのこころのさけ、もりてくいるとかいあるまじ、おもいしらせん、おもいしれとやつのすがたはつきまとわって、くるくるくる、たぐればちひろのだいじゃがかたち、まなこはかりんほのおのそびら、うろこをならしつのをふりたて、くもをまきあげまきおろし、たかだなめがけかかりしは、すさまじかりける)
(引用に誤字等あるかもしれません)

近松門左衛門さんの文章は迫力ですね、ひき込まれます。
そして坂東玉三郎さんのすばらしい千穐楽の舞台でございました。

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