-前略- 子供は誰でも自分の秘密の隠れ家にうずくまりたがるものです。 -中略- しかし、どこにも増して時を過ごすことが多かった場所は、庭の端にあった古い柳の木です(注2)。 その木は中が空洞で、節くれだった根がひろがり、樹皮も木髄もやわらかく剥げ落ちやすくなっていました。入口部分は太くてがっしりした馬銜(はみ)にも似た隘路になっていて、いったん身体をねじ込めば異なる生の内奥へ入ってしまえる。-中略- 頭上では木が生を謳歌し息づいている。かすかに揺れる幹を背負い、額をでこぼこの木髄に押しつけると、柳の樹幹全体が囁き声を立てながらはるか上空をしなやかにそよいでいるのを感知できる。狭いくぼみの中で光と枝々の抱擁を感じとれば、人は木を背負う小アトラスになり、たくさんのシカのつのをはやした小ケルヌンノスになるのです。(シェイマス・ヒーニー著プリオキュペイションズ 室井光弘・佐藤亮訳 P.18より)注2:ヒーニーは第三詩集『冬を生き抜く』(Wintering Out) 「神託」('Oracle')で、この柳の木の思い出を書いている。小さな子供が忍び込めるほどの虚がある柳はきっととても古くてとても大きいのね、私の好きな柳の木はまだまだね。
柳さんがんばってね、こちらもがんばるわ。
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