2015年8月25日火曜日

芥川龍之介の「上海游記」

待ち時間には「青空文庫」がいい と聞いていたので 早速立ち上げて新着のところを眺めました。
ラブクラフトもいくつかあったけれど長そうなのでやめ 芥川龍之介の「上海游記」を選んだ。
これがとても面白くて 数年前に坂東玉三郎さんの牡丹亭を観に上海を訪れたときのことも思い出しながら 一昔前の上海の様子を芥川龍之介の文章で追っています。

今読んでいるところは 「戯台(下)」、上海の劇場についてです、行った劇場の一つは天蟾(てんせん)舞台だそうですが その舞台のこと、京劇の特色、客席の様子、 などほんとうに面白い。 道具を使わない劇だそうで想像力が要るということですが 能で鍛えられている日本人にはすぐコツがのみこめるそうです。 そこには無いしきいをこえる時にちらりと見える小さな靴の底にたいそう可憐な心もちがしたそうです。

楽屋といっても舞台裏のような楽屋にいく話がとても面白くて声を出して笑ってしまいます。
・・・ 唯一つ書いて置きたいのは、楽屋にいる時の緑牡丹である。
私が彼を訪問したのは、亦舞台の楽屋だった。いや、楽屋と云うよりも、舞台裏と云った方が、或は実際に近いかも知れない。兎に角其処は舞台の後の、壁が剥げた、蒜臭い、如何にも惨憺たる処だった。何でも村田君の話によると、梅蘭芳が日本へ来た時、最も彼を驚かしたものは、楽屋の綺麗な事だったと云うが、こう云う楽屋に比べると、成程帝劇の楽屋なぞは、驚くべく綺麗なのに相違ない。おまけに支那の舞台裏には、なりの薄きたない役者たちが、顔だけは例の隈取りをした儘、何人もうろうろ歩いている。それが電燈の光の中に、恐るべき埃を浴びながら、往ったり来たりしている容子は殆百鬼夜行の図だった。・・・青空文庫 芥川龍之介 上海游記 十 戯台(下)より引用しました。
その楽屋で女形が何をしたか がオチでこの段落は終わるのですが興味のある方は青空文庫へ。

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