2010年3月29日月曜日

湯顕祖の牡丹亭(20)

蘇州同里嘉蔭堂


中国古典文学大系53戯曲集下還魂記(岩城秀夫訳)80頁
第20幕 夭折を悼む から

雨が降り風がふく中秋の日にいよいよ杜麗娘は儚くなってしまいます。
杜麗娘は 遺骸はお気に入りの梅の樹の下に葬ってほしいこと、自らを描き残した画は太湖石の下に埋めるようにと遺言します。
父母、春香、陳最良、石道姑が歎き悲しむなか、父杜宝は金寇から淮揚を鎮守すべしと命を受け出立することになりますが 後花園に梅花庵を建てて杜麗娘の霊をまつり陳最良と石道姑に回向をさせるよう手配します。

この幕は2009年11月に上海で公演された坂東玉三郎さんの中日版牡丹亭では第4幕「離魂」にあたります。
それまでの柔らかで明るい舞台が一転します、中秋の月あかりがさすような照明に脇の奏者たちがはじく弦や金の音で寒々とした秋の空気がながれ雨が降り風がでている寂寥な舞台になっています、坂東玉三郎さんが青白い衣装をまとい ひとつ置かれた椅子によりかかり肩で息をする様がいまでも頭に浮びます。そして玉三郎さんの杜麗娘は(蘇州の古語で)
母上様。
少し離れて下さいませ。
もっと離れてくださいませ。
と母上様と春香から距離を置き ひとりでお別れを言います。なんとしっかりした強い杜麗娘でしょう。。

湯顕祖の牡丹亭では父上さまが登場し中堂へ杜麗娘を運びそこで
このひと夜の雨はとめられましても
沈みし月 いかでか重生し
燈火の再び紅きをえんや
と杜麗娘は言い残し息をひきとります。

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